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落語「夫婦岩」を世に出していただきました。


「なあ、夫婦になるか」  「…いーわよ」 椅子もアツアツ。
深川資料館ホールの椅子足元

というわけで、
7月14日『夫婦岩』という落語を三遊亭兼好師匠にやっていただきました。

写真は、深川江戸資料館のホールの一番前の端、
二人席の足元にいたおふたりです。
開場前にスタッフさんが見つけてくださった「顔」です♪

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さて昔話をします。39年前のこと。
中央大学演劇研究会に所属する2年生のわたくし、
初めての戯曲を書きました。
いわゆるアングラ系芝居、仮設テント小屋で演じる芝居です。
春の公演『くらいつきついらく』という2時間ほどの作品でした。
その中の一幕、アイザックニュートン先生と少年1と少年2の場。
万有引力と友情の在処を求めて大騒ぎをする…謎の運動会のようなシーンがありました。
やわなテントはゆさゆさ揺れて、超満員のお客さんを危険にさらしました。
でも、大うけでした。役者もスタッフも未熟な学生だけど、とにかく熱が凄かった。
私はと言えば…今まで知らなかった多幸感にバビンと撃たれて呆然。
ずっと劣等感だらけでトゲトゲの子だったんですが、
この日のお客さんの反響で、自分で自分を認められるようになった瞬間。
大事な思い出です。
でも、この台本は大学卒業でダンボール箱にしまわれます。

その後30年後?今から10年前ぐらい?
趣味で落語台本の創作をはじめました。
ビギナーズラックがちょっとあったもんだからついついその気になって、
でも、そのあとはなかなか厳しい状況。いっぱい落選。鳴かず飛ばず。
アイディアなんてすぐに枯渇。そもそも誰にも頼まれてない努力ってつらい。
むなしい頭にふと浮かんだのは、大昔のあの戯曲。あのシーン。

実はそれが落語台本『夫婦岩』です。
ニュートン先生はご隠居さんに。少年たちは長屋の夫婦になりました。
一気に書けたけれど、洗練されたモノにならない。ニセモノくさい。
そしてあの20歳のときの多幸感が邪魔をして、冷静に直せない。
コンクールや、勉強会や、ご縁のあった噺家さん
いろいろな場に持ち込みましたが、採用にはなりません。
苦節10年、荒波にもまれた岸辺の『夫婦岩』です。

そして、この度の「擬古典落語の夕べ5」の企画ですよう。
幸運なことに台本執筆の出番を頂戴しました。
しかも、口演が三遊亭兼好師匠って‼ ほんとに⁉

まずは「ダメモト印」を自分のおでこに張り付けて『夫婦岩』をとりだしました。
そして手紙を書きました。
「初期に書いたもので構成も荒いのですが、拙作の中では、ばかばかしさはトップレベルと思っております。古典落語への憧憬が強すぎて冷静さを失っています。でも大好きなんです。これをどうか、なんとかしてください。10年引き出しにねかせていますが、時々取り出して手を入れています。でもどうにもこうにも……。もうこれは、いつか名人にそのまま託すしかないのだ!と思っていました。そしてその日が今日だと信じたいです。少しでも使いどころがあれば、いじっていただいて改造増強ブラッシュアップ組み立て直しでどうにかなりませんでしょうか。なにとぞご一考ください。伏してお願いいたします。」

そして、7月14日、昨日のあの高座なんでございますよっ!

チラシアップ

ご来場いただいて観ていただいた人はお判りでしょう。
すごい熱演。兼好師匠、大暴れでした。
構造も再構築されて、くすぐり満載。色っぽさは大増量。
ほんとうに大笑いさせていただきました。
大事な場面では大きな拍手が自然に湧き起こりました。
しかも初演なんです。本当にびっくりです。

※(観てない方はね、よろしかったら、録画の有料配信が決定しましたので、
購入のご検討をお願いいたします。詳細はこちらでございます⇒☆配信チケットのサイト☆




閉幕後、楽屋で無茶を申したおわびと、夢の高座へのお礼を申しあげようと…駆けつけましたら…

…ら!

師匠がいない…。なんとお帰りに?
いやっ…幻だったのでしょうか。あのひとは幻仮面だったのでしょうか…。


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「擬古典落語の夕べ5」については⇒☆このサイト☆♡このアカウント♡が詳しいです。

『夫婦岩』のルーツが、39年前の学生芝居の戯曲にあることは、
兼好師匠にも主催者さんにも、気恥ずかしくて言っていません。
でも、あの時の仲間たちが何人も駆けつけてくれました。
本当に嬉しかったです。

落語は、つねに変容して変質していくモノだと思います。
その流れの一つといえるかも…と思ってちょっと披露したくなりました。

私はこれから、兼好師匠に二通目の手紙を書きます。
一目でいいので、会ってほしいです。
そんで、あの…サインください。 

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さて
拙ブログ、『こんな顔』は、ふだんは
「顔にみえるもの」の写真集なんですが、
ごくたまに 玉坂めぐる≒荻野さちこの書く
落語台本の周辺の話題にもなります。

玉坂めぐる≒荻野さちこが書く
落語などの台本のあれやこれやにつきましては
  ↓
「こちら」 をクリックするとまとめて読めます。
10本の演芸台本が世に出ています。11人のプロの演者さんにご縁をいただいています。
ほんとうに有り難いことです。
ひよっこの駆け出し者ですがどうぞよろしくお願いいたします。 

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コメント 8

There are no comments yet.
misachi68
2023/07/15 (Sat) 23:14

大成功だったのですね!!
おめでとうございます。
そんな長い時間をかけて出来上がった作品だったんですね。

配信見逃さないようにしなくちゃ!
楽しみに待ってます♪

玉坂めぐる≒(荻野さちこ)
玉坂めぐる (≒荻野さちこ)
2023/07/16 (Sun) 08:03

To misachi68さん

ありがとうございます。興奮で嬉しくなってしまって、ながながの自分語り。恥ずかしいですね。お許しください。(^皿^:)それにしても39年って…数字の迫力よ!ひゃー。
配信よろしくお願いいたします。

マナサビイ
2023/07/19 (Wed) 16:09

玉坂さんがご自身の昔のことを語られるのって珍しい〜と思いながら読んでました。
大学時代に演劇研究会で戯曲を書いておられたんですね!
私、小・中学生の頃、高校生になったら演劇部に入りたいと漠然と思ってました。
でも、いざ高校に入り、演劇部の部員の顔ぶれ、雰囲気を見ると「どうも思ってたのと違う・・」と^^; で、結局芝居とは何のご縁もないまま今に至ります。

過去のご経験が今の落語の台本にも活かされているんですね。
東京って下北沢などにアングラの小劇場なんかが普通にあったりして、地方とは文化的環境がまるで違うなあと思います。こういう環境の中で10代の頃から当たり前のように過ごしていたら、感性もまた違ったものになるんだなあと思いますね。
何はともあれ、素晴らしい高座になったようで・・おめでとうございます!!e-402

玉坂めぐる≒(荻野さちこ)
玉坂めぐる (≒荻野さちこ)
2023/07/19 (Wed) 20:54

To マナサビイさん

ありがとうございます。高座の成功は、兼好師匠のお力です。
願いをかなえていただきました。本当に勉強になりました。

自分語りをするのは恥ずかしいです。でも今回は、台本の生い立ちを説明したくなりました。🙈あのころ世はバブルでDCブランドや外車やイタメシがブームでした。なので、アングラ芝居はとっくのとっくに下火でした。だから「中大劇研はアナクロ」と言われてました。都心から遠い東京郊外、蛇や狸の住む山の上にある大学なので時間が止まっていたのかもしれません。自分たちで工事現場用の仮設テントを建てて劇場にして土埃まみれで暴れる芝居…。バブルのおしゃれ祭に背を向けて(ていうか物理的にも参加できない)やばい変人集団が成り立っていたのは(文化的環境はともかく)野性的な環境のおかげはありそうです(^へ^)。それにしても大昔のハナシ。

あけぼう
2023/07/21 (Fri) 23:31

遅ればせながらおめでとうございます!!
それにしてもずっと大事にしてきたお話、それを受け止めた師匠さすがですね。
でもなんでそんなに早くいなくなっちゃうんだw

それから当時の仲間が見にきてくれたのもめちゃくちゃ良い話だなあ。
共通の大事な思い出が、再び形を変えて日の目を浴びて・・・素敵すぎる。

小々次郎
2023/07/22 (Sat) 10:46

おめでとーございます

上に習いまして出遅れてごめんなさい

最初に自分がデザインしたBARがいまだに一番好きなお店だったりします まだ専門的な知識もすくなくて若さだけで物語を作って勢いで完成させたものですが25年経った今でも入口をくぐると その時の高揚感を思い出してニヤけたり反省したりしています でもそこかしこに自分の源流を見つける事ができます 初めて他人に認められた瞬間ってのは自分にも覚えがあって、ちょっと違うのかもしれませんが共感して少し体温が上がりました 落語のことは正直よくわかっていませんが 玉坂ファンとして贔屓目にめちゃめちゃ応援してます 玉坂さんの今日、これからの創作活動の精力剤の一部、一因としてあれればなと願います 本当におめでとうございます^^


玉坂めぐる≒(荻野さちこ)
2023/07/22 (Sat) 14:09

あけぼうさんへ

ありがとうございます。
これまでにこの台本、見ていただいた噺家さんが「おもしろい」と言ってくださったことも何回かあるんです。でも、10年以上採用されない。ひょっとしたら、この日のためだったのかな…なんて。(^^:)ご縁というの、きっとありますね。

> それから当時の仲間が見にきてくれたのもめちゃくちゃ良い話だなあ。
> 共通の大事な思い出が、再び形を変えて日の目を浴びて・・・素敵すぎる。

ぐふふ…。大昔の仲間だからいまや居場所も全国に散ってます。配信されたら見てねーっていう連絡もしました。記憶もおぼろかもしれないし、特殊な鑑賞だけど、面白がってくれたらいいなあ。(^皿^:)

玉坂めぐる≒(荻野さちこ)
2023/07/22 (Sat) 14:25

小々次郎さんへ

ありがとうございます。

> 最初に自分がデザインしたBARがいまだに一番好きなお店だったりします まだ専門的な知識もすくなくて若さだけで物語を作って勢いで完成させたものですが25年経った今でも入口をくぐると その時の高揚感を思い出してニヤけたり反省したりしています でもそこかしこに自分の源流を見つける事ができます 初めて他人に認められた瞬間ってのは自分にも覚えがあって、ちょっと違うのかもしれませんが共感して少し体温が上がりました 


うわあ(^0^)体温こちらも上がります。共感していただいてとても嬉しいです。そのバーにも行ってみたいです。


〉落語のことは正直よくわかっていませんが 玉坂ファンとして贔屓目にめちゃめちゃ応援してます 玉坂さんの今日、これからの創作活動の精力剤の一部、一因としてあれればなと願います 本当におめでとうございます^^

そういうお言葉が本当に励みになります。チカラが湧きます。あてどなく書いていたころより近頃は不安がぶわっと膨らんでいます。いつも甘やかしていただいてありがとうございます。(^^:)スイマセンスイマセン

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