よい年の迎え方
貧しいお爺さんとお婆さんがすげ笠をこしらえました。
これを市で売り、お正月の支度をしようというわけです。
しかし、笠はひとつも売れませんでした。
帰り道、里のお地蔵様の並ぶ前を通りかかるころ、雪が降ってきたので、
お爺さんはお地蔵さんのおつむりに売れ残った笠を順々にかぶせてさしあげました。

お正月の支度はあきらめたけれど、
よいことをしたな、とお爺さんは思いました。
お婆さんにそのことを話すと、
お婆さんも本当によかったですねと言いましたとさ。

「笠地蔵」の話。
子どものときには気付かなかったこと。
最近ふと思ったこと。
お爺さんとお婆さんのこの余裕のことです。
現金収入はない。なのに自給自足や知恵や心のありようで
質素だけれど普段の衣食住をなんとかやりくりできる人たち。
彼らは我々に出来ないことを粛々とこなす万能のひと
敬うべき「昔の日本人」なんだなということです。

お地蔵様たちが大晦日にお礼の品を持ってきたかどうか
それはどっちでもいいような気がしてきました。
写真は、長野県松本市 千歳橋の上の歩道の杭たち。
(画像の明度をあげています)
夜になると、顔が現れるんです。本当です。

皆さん、今年もお世話になりました。
来年も「こんな顔」をよろしくお願いいたします。
どうぞよいお年をお迎えください。